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東京地方裁判所 昭和43年(借チ)1074号 決定

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕三、そこ、で附随処分の要否、内容について検討する。

(1) 存続期間について。前記認定のとおり、本件土地賃借権の存続期間は昭和五四年五月八日までであるが、本件増改築は全面的な改築であり、これを許可する裁判の効力と借地決第七条の適用の有無について当事者間に争いがあるのでこの点の紛争を予防するため、借地法第七条等の趣旨に従い、存続期間が二〇年になるように、これを昭和六四年五月八日まで延長する。

(2) 財産上の給付について。本件増改築による新築建物の効用期間は、本件建物より著るしく延長することは否定できない。

しかし、右の新築建物の効用期間中は借地権消滅の危険が全くないというものではなく、存続期間の満了に際しては、所謂更新料の支払を要求されることも考えられ、必ずしも、借地の安定的な利用が保障されるものではない。したがつて、本件増改築による借地上の建物の効用期間の延長分に応じて、申立人が当然に利得し、相手方が損失を蒙るというものではない。現在確定的にいえることは、前記のとおり、残存期間を一〇年延長するので、今後二〇年間は申立人の意思によらないで借地権が消滅することはないということである。

鑑定委員会は、本件増改築後の本件土地の建付地価格は、更地価格(一m2七万円)の約八六%とし、借地権価格は建付地価格の七〇%としたうえ、借地上の建物が朽廃に瀕している場合の増改築の承諾料を右借地権価格の五〇%の額とするのを相当とし、これについて、本件増改築の建物の耐用年数四〇年の現存建物の耐用年数一〇年に対する延長分三〇年の割合額をもつて財産上の給付額としている。これは、本件増改築後四〇年間は借地権の消滅の可能性がないことを前提とするものであり、また、借地権価格が期間の経過に応じて、一定の割合で消滅するもので、その期間を従前通りに延長するには、その延長期間に応じた割合の借地権利金を支払うべきであることを前提とするものであり、計算上の簡明さは否定できない。しかし、本件増改築によつて、借地権消滅の時期が延長する場合、相手方は、右の延長した期間の割合の借地権利金を喪失するものではなく借地権消滅によつて土地の返還を受け、新たに第三者に賃貸して借地権利金を取得する時期が右の延長した期間だけ遅れるにすぎない。

したがつて相手方の蒙る損失は、借地権利金に対する右延長期間の利息相当分である。

そこで、現存建物の残存効用年教(朽廃に至る年数)を一五年、本件増改築による建物の効用年数を五〇年と推定し、鑑定委員会の意見に従い本件土地の更地価格を一m2当り金七万円として、新たに新たに借地権を設定する場合の借地権利金(借地権価格)をその六〇%に当る金四万二、〇〇〇円とすると、この金額を元金とした前記効用年数の延長分三五年間の年五分の利率による権利の利息合計額は金一八万九、六七二円となる。しかし、これは五〇年後に取得すべき金額であるので、さらに、年五分の利率による複利現価を求めると、金一万六、五四九円となる。そこで、本件土地82.63m2についての借地権利金の利息の現価の合計額は金一三六万七、四四三円である。しかし、前記のとおり、本裁判においては存続期間を昭和六四年五月八日まで延長するにすぎないので、本件増改築の建物の効用年数五〇年のうち、さらに二回の契約更新の時期を迎えることになる。前記金額は、右の五〇年間は借地権が消滅することなく、また賃料以外の金銭等を要求されることなく、本件土地の安定的な利用が保障されることを前提とするのであるが、現在それが確定的であるとはいえず、前記二回の更新に当つては、所謂更新料の支払が要求されることが予想される。そこで、前記借地権価格一m2当り金四万二、〇〇〇円の二〇%に当る金額の本件土地についての合計額金六九万四、〇九二円の前記金一三六万七、四四三円から差し引くと金六七万三、三五一円となる。

本件借地権の設定に当つて権利金の授受がないこと、或いはその後の賃借権譲渡に当つた名義書換料の支払がなかつたとしても、それは当然に得べかりしものであつたとはいえないから、本件のように、当事者間の借地関係の継続を前提として増改築を許可するにあたり、過去に遡つてこれを補償するような趣旨で、財産上の給付を命ずる必要は認めない。よつて、申立人が相手方に支払うべき財産上の給付額は金六七万三、三五〇円とする。

なお、現行賃料は相当額であるので、本裁判においては増額しない。(福嶋登)

目録

(一) 土地

東京都北区上十条二丁目八番一

宅地 一、三四五m2(407.14坪)

の内 82.64m2(二五坪)実測82.63m2

(二) 借地契約

(1) 種類及び目的右(一)の土地に対する堅固でない建物の所有を目的とする賃借権

(2) 存続期間 昭和二四年五月九日から三〇年間

(3) 現在の賃料 一箇月金三、六〇〇円

(三) 現存建物

家屋番号 六九四番

木造瓦葺平家建居宅 一棟(現況モルタル塗)

床面積57.02m2(17.25坪)

(四) 増改築の内容

右(三)記載の建物を取毀し、左の建物を新築すること。

木造瓦葺二階建居宅 一棟

床面積一階55.89m2

二階51.03m2  以上

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